第五章 業 - Magic Recruit

「いいか、それ割っちゃダメだぞ? 高いんだから」

「割んねーよ! そんなガキじゃないもん」

(......ガキ)

 アルディと少年、シャントの三人は、街を光の筋の方へ歩いていた。宝石は、少年がつけているリストバンドのような物に収まっている。バンドの上にはガラスの球体があり、その中にコロッと宝石を入れている。

 この魔道具は、光で目的地を示すような魔術に用いる物で、ガラスの球体という形状のため、三百六十度どこでも光が指し示すことができる。さらに、昼間でも光が見えるよう、バンドの周りに黒い霧を発生させる優れものだ。アルディが学生の時に購入したもので、十スコールはする高価な代物である。無論、子供には持たせたくない一品だ。

 そんなこんなで、アルディは、少年がこいつを壊さないかヒヤヒヤしながら一緒に歩いているわけである。

 彼らは、光の筋の方向にひた歩を進めた。時々建物にぶつかり迂回することがあるが、道なりに進めば、おおよそ光の指すほうへ向かうことができた。

 行くうちに、大きな建物が見えてきた。

「ん、空艇港じゃん」

 どうやら、光はその建物を目指して伸びているようだ。

 "空艇港"とは、飛空艇の港、つまり飛空艇の昇降艇、積荷の出し入れなどをするところだ。主に旅客艇の運営場である。マーリアルは国内でもかなり大きい街のため、国外線も出ており、飛行場は大変活気に満ちている。多数の艇が出入りしていた。

(懐かしいなぁ、修学旅行以来だ...って、まだ半年しか経ってないけど)

 アルディの学校の修学旅行の行き先は、国外の国と決まっており、多文化による魔法学を学ぶ旅であるが、生徒にとってはただのお楽しみ旅行に過ぎない。彼は本気で学ぶつもりで、両親に懇願して旅費を工面してもらったが、行った先では、友人に流され、ただ遊んで帰ってきたようなものであった。

 彼がそんな苦いような、楽しかったような思い出に浸っていると、少年が突如叫びだした。

「あ、あぁ~~~~~~~!!!」

 そばで思いっきり叫ばれたものだから、アルデイとシャントは飛びのくように後ずさった。

「ど、どうしたんだよ、急に」

 もうやめてくれ、とばかりの表情のアルディ。しかし、少年は構わず畳み掛けるように叫んだ。

「あそこ、あそこに行ったよ、今日!」

 アルディはそれを聞くや最初は怪訝な顔をしたが、次の瞬間、その表所はやわらいだ。

「おう、そうかそうか、だったらあそこにママがいるんだな?」

「わかんない、でも今日ママと一緒にあそこに行ったよ!」

 アルディは心底ホッとした。やっとめんどうなことが終わる、だなんて思っていた。あそこにいるだろう、いや絶対いる。いてもらわなきゃ困る。そう自解した。この少年につき合わされるのは、もうくたくたであった。そうホッとした矢先、少年はだぁーっと走り出し、空艇港に向かっていった。

「おあ、ちょっと待て!!」

 アルディとシャントは急いで少年を追いかけた。

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