第五章 業 - Magic Recruit
ピイィン!!
何かが砕けたような、あるいは鳥の鳴き声のような、甲高い音が、非常に短い時間鳴り響いた。と同時に、魔法円の中心にあるピンクトルマリンが一瞬、強烈な光を放った。と、その光は収束し、一本の光の筋となった。
光の筋は、ある方向に向け建物の壁を突き抜けるように伸びていった。
その不思議な現象を、少年は見逃してしまった。光が伸びる前の強烈な光のおかげで、目を覆ってしまったからだ。
「ホラ、目開けてご覧よ」
アルディはからかい半分で言った。
少年は恐る恐る目を開けた。と、まずは光が当たっている壁を見て、その光がどこから発せられているのか、と、目で追った。
「おぉ! なんだこれ!?」
少年は驚きを隠せず、体でオーバーな表情を出した。光は、ピンクトルマリンから発せられていた。少年は、興味津々と宝石に触る。宝石はなおも光を発している。
「その光の先に君のママがいるよ」
少年が、宝石を手の平でコロコロさせているのを止めようともせず、アルディは言った。
「え、ほんと!?」
少年は、目をキラキラさせて言った。アルディがうなづくとさらに目をキラキラさせて、言った。
「すっげー、ラピュータ島の伝説みたいだ!」
その言葉に、アルディは得意満面になり、これでもういいべ、と心の中で呟いた。
「じゃ、俺はこのへんで」
「えぇ!?」
アルディが立ち去ろうと身を翻すと、少年は光を見た時よりも驚いた顔で彼を睨んだ。
「な、なんだよ、だから、その光の先にママがいるんだって! もう大丈夫だろう?」
彼のその先ほどとは打って変わった横柄な態度を見ると、少年はいきり立った。
「なんだよそれ! どうすりゃいいかわっかんないし! このケチンボ!」
「あー、もう知らん知らん!」
彼の中では、この場で仕事は完全に終了していた。それにしても、彼の瞬時の身の変わりようは、この少年に負けじと劣らずか。
本当に彼が行ってしまうのを知るや否や、少年は再びわんわんと泣き出した。
彼は、フンと向き直り、屋敷から出ようと歩きだした。
しかし、その前にシャントが立ちふさがる。シャントは半目でじぃーっとアルディを睨んでいる。物言いたげなのは、言うまでもない。
「な、なんだよ、シャント...」
彼は、彼女が何を言いたいのかは察しがついたが、知らないフリをしていたかった。これ以上のめんどうはごめんだ、とばかりである。
しかし、泣き叫ぶ子供と、じーっとこっちを見るシャントに挟まれた彼は、しばらくうなっていたが、観念したように口を開いた。
「だーーー、もう、わかったよ! ママのところまで一緒に行けばいいんだろ!」
アルでディは半ばやけであった。少年はそれを聞くや、泣くのをパッと止め、ニカっと笑顔を見せた。シャントは目を細めてニコッと笑った、気がした。