第二話 価値観 - FINAL FANTASY DARK CRYSTAL

 ガンズルムの街は黄昏に染まっていた。黄昏と言っても、その夕闇は、人工的に作られたものだ。その人工的に作れられた闇でも、太陽は赤く染まっていた。赤々と...。

 その赤い太陽に染められ、二人の人間が、時計塔の上の屋根にいた。一人はローブを身にまとっている。もう一人は若い女で、所々肌を露出させた格好をている。夕日は地平線の彼方で、その姿を留め、落ちる気配を見せない。太陽の明るさのみが除々に暗くなっていく。はたまたで見ていると妙な光景だ。

「夜が消えかけておる...。」

 ローブの人間が言った。声と体格から男のようだ。その声は消えかけたような、しわがれた声だが、不思議と魔力的な力があるように思えた。

「そうだね。」

 若い女が答えた。その声は、姿に似合わず、若さを感じられない。男と同じような、消えかけた声のような声だ。

「いつしか闇のクリスタルも力を失い、完全に夜は無くなるだろうな。」

「...そうだね。」

 男が言い、若い女が答えた。二人は全てを分かり合っている、そんな感覚で会話をしているようだった。二人はしばらくの間、無言で夕日を眺めていた。さっきから全く位置を変えずに、明るさのみを失っていく太陽。世界から光だけが除外されていく、そんな感覚に襲われそうな、そんな光景だ。

「でも、あんたのやってることは間違いじゃないよ。」

 若い女が、男を見つめながら言った。その声には、肯定的な気持ちが込められているように感じられたが、その奥には、何か悲しみや、疲労や、哀れみ、そういったものが込められているように思えた。

「そうだな...。」

 男が答えた。その言葉は若い女にかけた言葉のようで、男が自身に語りかけているようにも思えた。まるで、自らの迷いを、隠し、打ち消そうとしているかのように。

 いつの間にか、周りは暗黒に包まれていた。光のない夜。しかし、その夜には、どこか、世界が嘘をついている、そんなよそよそしさが感じられた。二人は、すでにその場にはいなかった。

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