第二話 価値観 - FINAL FANTASY DARK CRYSTAL

 夜中、皆が寝静まった中、カールは目が覚めた。単純に尿意を催してのことであったが、彼は妙な胸騒ぎを感じていた。だが、彼は、そのあまりにもさりげない胸騒ぎを気に求めることはなかった。

 カールは、テントにぎゅうぎゅう詰めで寝る四人を起こさぬよう、慎重にテントを出た。

「さて、どこですっかな、ってどこでやっても変わんねぇけど」

 彼は、誰も見ていないとわかりつつも、茂みに入り、用を足した。たとえ周りに誰もいなかろうと、人間社会にいるものにとっては気恥ずかしいものであろう。

 起きた理由も解消されたはずだが、先ほどの胸騒ぎからか、しばらく眠れそうになかった。この胸騒ぎが収まるまで、またはその原因がわかるまで、少し歩くことに決めた。

 茂みを分けつ、少し強引に進んでみるカール。と、何匹かの幻光虫が、ある一定の方向にむかっていくのを見つけた。

「どこかに死体でもあったりしてな...。」

 カールは、幻光虫のことが気になったのか、後をついていくことにした。

 しばらく歩くと、急に木々が無くすっぽりと空いた空間にたどり着いた。その空間の直径約十メートル前後であろうか。その空間の端に、巨大な、幹に無数のうねりをもつ大木があった。うねりは、いくつものくぼみを作り、そのくぼみには煌めく水が溜まっていた。あたりには、何千匹もの幻光虫が漂い、その空間はまるで、自然が作り出した光のコンサート会場のようであった。

「ミルラの泉か...。こんなところにもあったとはね。」

 ミルラの泉とは、ガイア各所に存在すると云われる、伝説の泉である。その場所から命の元となるバイトが生成され、あらゆる生き物に宿っていく、と云われている。

 カールは、ミルラの泉たる、巨木に近づいた。周りの木々は、ミルラの泉を護るようにおおい茂っていた。

 と、くぼみの一つに、人が入っているのが見えた。地面から数段ほど上のくぼみで、少々下に傾いているからか、カールの側からも見ることができた。

 その人は、女性で、ピンクのかかった白の髪。気絶しているのか死んでいるのか、ピクリとも動く様子がない。

 女性はとても綺麗な顔立ちをしており、周りの幻想的な風景も相まり、一層美しく見えた。

 カールは、そのあまりにも美しい光景に、我を忘れ、その場に佇んでしまっていた。

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