第二話 価値観 - FINAL FANTASY DARK CRYSTAL
オチューは、"お食事"をしようと、触手をぶん回して気絶させたチョコボ士を、口へと近づけた。しかし、二人の戦士が近づき、身の危険を感じたか、動きを止め、応戦する構えをとった。
ブン、ギィィン!!
ザザザザザザッ!!
振り回された触手の一本は、バルドスに向かった。かろうじて大剣で受けたものの、地面を引きずるほど、後退させられた。
「ちぃ、とんでもねぇ怪力よ...!」
バルドスは、耐え抜いたが、悲痛の色を浮かべた。
一瞬、一時の危機を回避したと、安堵の仕草を浮かべたオチューだったが、彼は、モンスターなりに違和感を感じ、あたりを見渡した。もう一人の姿がない。
「ふん、とりあえず犬並みの脳みそはあるみてぇだな。」
オチューに突如影がかかる。影の方に振り向くオチュー。そこには、今まさに剣を振り落さんと飛びかかるカールの姿があった。
ズバっ!!
ゴトッ......!
刹那、チョコボ士を鷲掴みにしていた触手は、体から約三十センチほど離れたところから切り離された。チョコボ士は、地面に打ち付けられた。
「キュラララッラララッ!!!!」
ブオォン! ドゴォン!!!
オチューは一瞬何が起こったか、理解するのに手間取ったが、事を理解するや否や、そこにカールがいるであろう位置に向かい、触手を打ち付けた。
しかし、触手は空を切り、硬い地面をえぐっただけであった。
「ち、ひやひやさせんなよ、大将。」
「バーカ、そらこっちのセリフだ、早々に吹っ飛ばされやがって。」
カールはすでに、チョコボ士を抱え、バルドスが地面を削った地点まで後退していた。もう一人のチョコボ士と商人が駆け寄る。心配そうな二人に、カールはチョコボ士の様子をサッと確認し、言った。
「特に怪我もないし、気絶してるだけだ。命に別状ないよ。」
「あああ、傭兵さんありがとうござんます、お、おねげーします、あいつをなんとかやっつけてくだせぇ...」
商人は、気絶した、チョコボ士を抱えると、そそくさとチョコボ車の後ろに下がってしまった。
「ち、調子のいいやつら...。」
カールは舌打ちした。
「まぁ、しゃーねーよ、民衆はか弱い。それより、アレ、どうするよ?」
オチューは怒りにかられ、触手を今までの数倍デタラメに振り回し出した。緑の体が赤く見えるほどの荒れっぷりだ。
「迂回ルートもなさそうだし...。やるしかねーだろ。」
「かかかか、黒魔道士抜きじゃ、舞踏会には間に合わなさそうだな!」
バルドスのジョークにカールは微笑みを浮かべた。
「へ、灰かぶりのお姫様には、魔法が解ける前にエンディングを見せてやるさ。」
カール、バルドスは左右に分かれ、オチューへと駆け込む。オチューは先ほどと同じように迎撃体制をとるが、その目(オチューに目があるかは甚だ疑問ではあるが)で二人の動きを追うことは叶わない。なぜなら、そのスピードは初回よりも数段上の速さであったからだ。二人は、初見はチョコボ士を助けるのもそうだったのだが、オチューの油断を買うため、わざとスピードを落とし、飛び込んでいたのだ。
ブオォン!ブンッ!
オチューは、負けじと、周りに触手をブン回すが、二人は、さらりと躱した。オチューが、自分たちを見失ったのを尻目に、二人はオチューに得物を振り付けた。
バキィィン! ズバン!
「ぐっ!」
「ちぃっ!」
二人の得物は、オチューの胴体の左右に傷をつけた。しかし、彼らが思ったよりその外殻は硬く、バルドスが幾分か大きな傷はつけたものの、おおよそダメージといえるものは与えられなかったようだ。
二人はアイコンタクトをとり、一旦引くことを決断。身を翻し...。
ブン! ブン! ドゴォオン!
「ぐあぁっ......!」
「カール!!!」
撤退を決意した二人に、無情にもオチューは技をしかけた。周囲に何か霧のようなものを撒き散らしながら踊り回った。カールは踊りの一撃を食らい、荷台の中まで吹っ飛ばされた。