第四話 闇の異業 - FINAL FANTASY DARK CRYSTAL

「あそこであれを出さなきゃ勝ててたんだがな...。」

「いや、確かにそうかもしれないがね、だんな、アンタの持ってるカードが弱すぎたんだよ」

 言われた男性の方は「なにをっ!」などわめき散らしていたが、言った本人はあきれまじりでそれに言葉を返していた。

 カールは、勢い込んで貴族らしき男性達に話しかけた。

「カードって、もしかしてあれですか?クアッドミストですか?」

「え、あ、あぁ、そうだが...。」

 クアッドミストとは、ガイアで世界的に流行っているトレーディングカードのことで、モンスターやアイテムの絵柄に、八方いずれかの矢印と四桁のネクタル文字サンドリア語で使われる二十六種の文字のこと)と数字を合わせた十六進数が印字されており、その矢印と数字を使って、バトルをするというものだ。

 男性達は、見知らぬ青年に話しかけられ、虚を突かれたようだが、親切に応えてくれた。

「今、第一ホールで、大クアッドミスト大会になっていてね。通常のカード交換の他に、手に入れたカードによって報償金が出るのだよ。」

「ほほぅ...。」

 ウィーネは、カールが悪い顔になっているのがすぐにわかった。

 男達は話し終えると、デッキの脇の通路から自身の部屋へと帰っていった。

「よーし、やってやるぜ。荒稼ぎよ。」

 カールは、クアッドミスト大会に参戦するつもりのようだ。

「ちょ、大丈夫なの?カード持ってるの?ってか、そもそもルールわかるの?」

 クアッドミストは、ルール自体は単純であるが、開示されてる情報が少なく、ルールがよくわからないと、評判のカードゲームであった。

「ふ、コレクターたるもの常にデッキは持ってるもんよ。して、ルールはもち大丈夫だ、クアッドミストは出た当初からずっとやってるし。」

『ないわ...。』

 ウィーネは、カールの意外な一面を見て、オタク臭を感じて、ドン引きしてしまった。しかし、反面、好きなものがあるのはいいな、と羨む感情も湧いた。ウィーネは、生真面目な性格が災いしてか、好きなものと呼べるものがなかった。魔学の研究自体は好きであっても、仕事という意識と、使命感の方が遥かに勝っていたのだ。

 二人は、夕から夜へと色を変えゆく平原の空を背に、第一ホールへと向かった。

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