第四話 闇の異業 - FINAL FANTASY DARK CRYSTAL

 それを聞いた大男は、女に、ジリジリと歩み寄った。女は「なにをする気?人を呼びますことよ!」など、叫びながら後ずさったが、大男が女に指を指し、何事か詠唱した。

「...サイレス。」

 と、女の声は失われた。女は、声が出なくなった事に、より恐怖が募ったか、腰から崩れ落ちた。大男がさらに詰め寄る。

 そして、大男は予想だにしない行動にでた。女の頭を掴み、自身の目線より上に持ち上げたのだ。女は声にならない叫びを上げながら、大男の腕を引き剥がそうと暴れるが、大男はビクともしない。

 次の瞬間、信じられない光景が、カールとウィーネの目に飛び込んできた。大男は、再び何事か詠唱し、女の胸元に手を差し込んだ。

「...っ!」

「!?」

 女は苦痛とも、悲痛ともなんとも言えない、苦悶の色を浮かべた。大男の手は女の体を貫かんと、ズブズブと体の中に腕ごと入れていく。しかし、差し込まれた部位からは、出血もなにもない。と、腕が差し込まれてる口からは、黒いモヤのような何かが揺らめき出した。

 数秒の後、大男は腕を引き抜いた。その手には、先ほどの黒いモヤのようなモノが握られている。腕が差し込まれた部位は、腕が引き抜かれた瞬間から塞がり、抜かれ切ると何事もなかったかのように、元の女のふくよかな胸があった。

 ウィーネとカールは息を呑みその光景をただ見据えることしかできなかった。

「どぅルたニぃ、モシャス」

 ウィンダス高官の一人は言った。モシャスと呼ばれた大男を褒めたようだ。

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