第三話 下手な嘘 - FINAL FANTASY DARK CRYSTAL
「はっ...!」
ウィーネはここで目を覚ました。少々前の記憶の夢。しかし、現実とは少々違う夢。実際には、その時ダリスに襲われるような事はなかったのだ。
なぜそのような夢を観たのかは、思案する間も無くウィーネは悟った。目を開けた目の前にはまさに夢に見たような場面があったのだ。
全身黒ずくめのローブを纏った者が、ウィーネに馬乗りになり、まさに今この瞬間、携えたククリ刀を振り下ろさんとしていたのだ。
ブン!
ザクッ!!
ウィーネは、ククリ刀が振り下ろされるな否や、素早く寝返り、躱した。ククリ刀は、瞬間前までウィーネの顔があった位置の枕を貫き、ベッドにも深々と突き刺さった。
「やぁあっ!!」
ウィーネは、ローブの者が一瞬怯んだ隙に、押さえつけられた腕を引き抜き、渾身の力で、ローブの者の脚を掴み引き払った。
ゴトッ!バン!
ベッドから転がり落ちたローブの者は、受け身を取り、すぐさま立ち膝に起き、ククリ刀を構えた。ローブからは毛むくじゃらの突き出した顔が覗かれた。アルエルタ族である。
『ウィンダスからの刺客!?』
ウィーネも、素早くベッドから飛び降り、ローブのアルエルタと向き合う。と、腰に付けた小さな巾着袋から、おおよそ袋に入りきるサイズではない獲物を取り出した。獲物は、大きな刃の付いた鎌であった。刃から柄にかけて、禍々しい装飾が施されており、見る者に、死神のそれを連想させる。デスサイズである。
ウィーネは獲物を構えた。
『国境を越えてまで追ってくるなんて...。よっぽどダークスフィア製造の事実を知られたくないってことか...!』
ウィーネは心で、夢に出てきたダリスに感謝した。とんでもない夢であったが、あの夢が無ければ、今頃、ベッドがウィーネの血で染まっていただろう事を思うと、悪夢であった事に感謝さえできたのだ。
『向こうは話が通じる相手じゃないだろうし、こっちもやられるわけにはいかない...!』
ウィーネは意を決した。命まで奪おうとまではいかずとも、戦闘不能にするまでは、ダメージを負わせなければなるまい、と。
両者は身構えたまま、動かない。
ジリッ...
アルエルタは、一瞬、後ずさりをした。
ダッ!
ウィーネは、その隙に踏み込み、獲物を振り下ろした。
ガキィィンッ!!
アルエルタは、ククリ刀でウィーネのデスサイズを受けた。が、武器の大きさからして、受け切れるものではなく、切っ先を逸らし、鎌を弾き落とした。
ドスッ!
「んっ!」
ブン!
ウィーネは即座に、少々かがみ気味になりつ、床に突き刺さった鎌を回転し抜き、そのまま相手に突き出した。刃は鎌の内側だけでなく、外側にもついていた。
バッ!
ローブのアルエルタは、バク宙でその一撃をかわし、距離をとった。着地するやいなや、輪にした指を口に挟め、甲高い指笛を吹いた。
『仲間!?まずい!』
ウィーネは、直感で相手が仲間を呼んだと悟り、身構えた。