第六章 一瞬の永遠 - Magic Recruit
塔の中は、先ほどの路地裏よりも暗い。闇より暗い闇があるものか、と人は思うかもしれないが、塔の中はただの闇よりも深い何かがあった。言うなれば、空気の重さと言おうか。気に敏感なシャントは中々塔に入れる気がしていないようだ。小刻みに震えている。
「大丈夫だよシャント、ちょっと重っ苦しいけど、怖いウワサはないから安心してよ」
そうは言われても、シャントは中々踏み出せない。
しかし、それにかまわずアルディは上に螺旋状に続く階段を昇り始めた。塔に入る恐怖より、置いていかれる恐怖が勝ったか、シャントは慌ててアルディの傍まで飛んでいった。
と、彼の言ったとおり、シャントにとっても、意外に怖い気は感じない。シャントは安心してアルディの後についていった。
本来なら、こういった場所はゴーストスポットとして騒がれやすい。誰にも見つからないからと、塔の中で自殺する者が出て、ウワサに拍車をかけるなんてことが常であるが、この塔にはそんなウワサさえない。本当に"忘れ去られた場所"のようだ。だから見た目に反して、陰険な印象は感じられないのだろう。
それにしても、彼はどういった経緯でここを見つけたというのか。
二人はひた階段を昇っていった。永遠に続くかのような、そんな錯覚に襲われる。上を照らし先を見ようにも、光は一番上までは届かない。二人は永遠の闇に吸い込まれたのであろうか。