最終章 この時のために - Magic Recruit
エピローグ
マーリアルの街はアパートが多い。魔道師のメッカと呼ばれるくらいで、人が多く集まるせいか、都会の様相を呈しているからである。一軒家を建てるための土地代も、他の地域より少々高値である。
そのマーリアルの一角に、小さな一軒家があった。一軒家が建ち並ぶ住宅街の一角に佇む、ごくごく素朴な家。
小さな家であるが、庭に大きな木が立っている。その木の周りには、光が舞い、その光は、現れては消え、また現れと、幻想的な光景を演出していた。
この光は幻光虫ではなかった。そもそも、幻光虫は、夜にしか現れない。
その光の正体は、妖精であった。
作業服を着た男性が、木の手入れをしていた。
その男性に、四歳くらいの少年が駆け寄ってきた。
「ねぇねぇ、お父さん、なんでうちの木には妖精さんがいっぱい集まるの?」
くりくりとした目玉がかわいらしい。喋れるようになってから間もないのか、言葉がたどたどしい。お父さんと呼ばれた男性は、いったん手を止め、タオルで額の汗を拭った。
「それはね、この木が元々妖精さんだったからだよ」
男性は、少年に向き直り言った。
少年は、不思議そうに木を見つめ、ふくれっ面で言い返した。
「うそだ~、木と妖精さんは全然違うじゃんか!」
男性は、ニカッと笑っていった。
「いやぁ~、父さんも実は聞いた話なんだよ。お父さんのおじいさんが、魔道師になる前にね......」
男性と少年は陽気に話しながら、出窓から家へと入っていった。
木の周りでは、幾つもの光が、いつまでも子踊っているのであった。