第一話 潜入 - FINAL FANTASY DARK CRYSTAL

 ウィーネを乗せた飛空艇はものすごいスピードで、夜の砂漠を駆けていた。倉庫、もとい城は二、三秒後には既に見えなくなっていた。ウィーネは隊長たちが心配になったのか、後ろを見据えた。ウィーネの飛空艇は、コクピットの前にクリスタルでできた、風受けががあるだけで、後方には何もなく、顔を向ければ、後ろの様子が容易に見ることができた。ウィーネがしばらく後ろを見ていた。と、視界のはずれのほうに、小さなものがこっちに向かっているのが見えた。こちらの飛空艇より大きく、またスピードが速いのか、視界の中で、ぐんぐん大きくなってゆく。

 『ウィンダスの空艇隊!?』ウィーネは驚愕の表情を浮かべた。

 そもそもウィンダスは、昔から魔法技術で発達し、それ以外の、文化や文明というものは、他の国にはっきりと差が出るくらいに、劣っているものであった。しかし、ここ数十年と、ウィンダスの王が変わったのを境に、あらゆる技術、文化を発達させ、他の国に、全ての面で勝っていると言っても過言ではないというくらいの成長を遂げていた。その技術の一つが、飛空艇技術である。元々、飛空艇技術は、ガンズルムの皇帝が、開発、実用化したもので、まだまだ技術的にも、安全面も確かなものではなく、ガンズルムが極秘に開発を進めていたものだ。しかし、どこから情報が漏れたのか、ウィンダスも極秘に開発を進めており、つい近年に、軍事的利用を可能としたのである。今では、ガンズルムの飛空艇技術に勝るとも劣らないほどの高い水準を誇っている。

 ましてや、ウィーネの乗る飛空艇は、小回りが聞くものの旧式のもので、スピードは速いが、最新のものには敵わなかった。ウィンダスの空艇隊は休む暇も与えず、ウィーネの飛空艇の後方二百メートルのところまで迫ってきていた。

「っ!」

 ウィーネが、舌打ちにも似た音を口から発した。と、ウィンダスの空艇隊が旋回し、ウィーネの飛空艇を取り囲もうとしている。ウィーネも何度も急旋回を繰り返し、なんとか逃れようとするが、あ、と言う間に四機の飛空艇に囲まれてしまった。

 その時、ウィンダスの飛空艇から、何か光が見えたと思うと、ウィーネの乗る飛空艇に向け、光の帯が発射された。ウィーネはロール(空艇の旋回法の一つで、機体を水平に回転させる旋回法)を何度も繰り返し、辛くもその攻撃をかわした。

「うぇ...。」

 ウィーネが、小さな声を漏らした。先の回転で気分が悪くなったようだ。しかし、ウィーネはすぐにま後方の空艇を見据えた。しかし、二機足りない!ウィーネは、はっとして、素早く自機の両側を確認した。と、両側に、二機のウィンダス空艇隊がいるではないか。

 ウィーネは驚愕のあまり、目を見開いたまま、その片方を見た。と見たほうの空艇から、さっきとは違う色の光が、夜の闇にきらめいた。全てがスローモーションのように動き、自分も、その光が、自分に、向かって飛んでくるのも、全てがゆっくりに動いていた。

 次の瞬間、ウィーネの飛空艇は、大きな爆音と爆炎とともに、漆黒の闇の中を、落ちていた。はたまた殻見ても、明らかに操縦者は死亡していると考えられるだろう。

 その落ちていく、飛空艇の姿は、まるで、戦に負けた天使が羽根をもがれ落ちていくかのようだった。

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